株式会社サイトロンジャパンが、Synta TechnologyCorpのACUTER OPTICSブランドとのコラボレーションにて商品化したポータブル天体望遠鏡キット「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」を2021年8月23日に発売しました。
天体望遠鏡をこれから購入しようと検討されている天体望遠鏡初心者の方も注目すると思われるこの商品。機材レビューと実際に天体を見た時の様子を複数回に分けて報告します。
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」 の仕様はこちらです
・光学系:マクストフ・カセグレン式望遠鏡
・主鏡直径:60mm
・焦点距離:750mm
・F値:12.5
・付属アイピース焦点距離:10mm(倍率75倍), 20mm(倍率37.5倍)
・質量(鏡筒+架台)
約1.3kg(ファインダーを含む、接眼アクセサリー含まず)
付属品はこちらです
・付属品
アイピース(10mm, 20mm)、正立天頂プリズム、6×21ファインダー
スマートフォンアダプター、スマートフォン固定用ゴムバンド
販売価格:17,778円(税込)
マクストフ・カセグレン式望遠鏡としては、主鏡直径(口径)は小さい部類に入ると思いますが、小型屈折望遠鏡ではメジャーな60㎜ありますので、十分な主鏡直径だと言えます。
また、F値が12.5と無理のない設計となっていますので、デザインからは想像しにくいかも知れませんが、とてもシャープに見えます。
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」は、取っ手のついた箱に全て収納された状態で届きます。天体望遠鏡は、その大きさから、鏡筒、架台、アクセサリーと、別々の段ボールで届くこともあり、自宅での収納場所に悩むことがあります。 「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」 の場合は、その心配もなく、全てがこの箱の中に収納する事ができるので、使わない時の置き場所に悩むことは無いと思います。
問題があるとしたら、あまりにピッタリ入っているので、初めて取り出す際には、どうやって入っていたかを覚えながら取り出してください。しまえなくなります。
商品を箱から出すと、このようになります。左側の段ボール箱の中に、アイピース、ファインダー、正立天頂プリズム、スマートフォンアダプターが収納されています。
鏡筒は、架台についた状態で収納されていますが、一回架台から外さないと、鏡筒と架台の間に挟まっている緩衝材を取り除くことができません。
それ以外の同梱品は、A4サイズの取り扱い説明書が1部入っています。初心者用天体望遠鏡セットで見かけることがある「天体観察の方法」などの天体観測初心者向け冊子や「星座早見盤」などは同梱されていません。
日本国内では、あまり親子向けの「天体観察」の書籍が少ないので、月や木星、土星を見るまでの流れを説明した冊子が同梱されていたらと思いました。
ただ、余計な同梱品を少なくして「買いやすい価格」にしている事は高く評価できると思います。この内容、この性能で『購入価格2万円以下』はスゴイと思います。
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」 の鏡筒は、マクストフ・カセグレン式望遠鏡です。そのため、主鏡直径:60mm、焦点距離:750mmというスペックですが、鏡筒全長約210mmと、とても短くなっています。
また、この鏡筒の最大の特徴は、鏡筒横の一部が取り外すことができ、鏡筒の中を見ることができる点です。これにより、 マクストフ・カセグレン式望遠鏡 の構造を実際に目で見ることができます。(ちなみに、カメラやレンズのカットモデルを作ろうと思うと、かなりの予算が必要です…)
一般的なカットモデルと違って、実際に使えるという点が素晴らしいと思います。
自分が使っている道具がどんな構造なのか、ここのノブを回すと、何がどう動くのか?そいうった構造を自分の目で確かめられるこの商品は、天体望遠鏡に興味を持った子ども達だけではなく、多くの子どもたちに実際に見て、触ってほしいと思います。
ただし、仕様の所でも述べた通り、 マクストフ・カセグレン式望遠鏡としては、主鏡直径が小さいため、ピントを合わせるためのノブが小さく、アイピースを取り付ける所とも近いため、手の大きな大人には、ピント合わせの操作が若干やりづらい点があります。
あと、この鏡筒を様々な所で使ってみたいと思っていた方には、最大のマイナスポイントかも知れませんが、鏡筒には、三脚ネジ穴はありません。鏡筒をそのまま三脚に載せて使うことはできません。
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」には、天体を導入するための「ファインダー」がついています。鏡筒が小さいため、ファインダーが鏡筒に近すぎると覗き難くなるのを防ぐために、「ファインダー」の足はこのクラスとしては比較的長くなっています。そのおかげで少しは除きやすくなっています。
また、かなり高額の鏡筒にならない限り、標準でついてくる「ファインダー」は、倒立像(覗いた時に上下左右が逆に見える)なのが一般的ですが、「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」についてくる「ファインダー」は、なんと「正立ファインダー」です。そのためファインダーを見ながら天体望遠鏡を操作しても、「ファインダー」で見えている像と、天体望遠鏡の動いている方向は同じになりますので、初めての方でも操作しやすいと思います。
この価格帯で「正立ファインダー」は正直驚きました!(本当か確認してしまった位です)
ただ、せっかくそこまで配慮したのなら、ファインダー調整方法も、初めての方でもやり易い方法にして欲しかったと思うのは、欲張りでしょうか?
鏡筒と「ファインダー」の中心をあわせるには、「ファインダー」を支えている3本のネジの押し引きで調整を行います。物理的に3点指示が理想的なのは、確かですが、この3点ネジで「ファインダー」の中心を合わせる方法は、お世辞にもやり易い方法ではありません。
また、この「ファインダー」のピント調整方法は、対物側(星空側)のレンズを回して合わせるタイプですが、私のは「これ以上回したら、壊れるんじゃない?」と思うくらい、かなり力を入れないと回りませんでした。
同梱されているアイピースは、20㎜と10㎜の2本です。20㎜を使うと倍率が37.5倍に、10㎜を使うと倍率が75倍になります。
この組み合わせであれば、天体を導入する際、星雲星団を楽しむ、月全体を楽しむなどには、20㎜のアイピースを、木星や土星などの惑星を楽しみたいときには、10㎜のアイピースを使って天体観察を楽しむことができます。
真上にある天体を見やすくするために、正立天頂プリズムが同梱されています。普通同梱されるのは『天頂ミラー(鏡で光の進む方向を90度曲げる)』が多いのですが、「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」には、プリズムを使って、覗く景色が上下左右正しく見えるようになる『正立天頂プリズム』が同梱されています。
ミラーよりプリズムの方がとても高価になってしまうのですが、初めて天体望遠鏡を使うユーザーの事を想定して、このような同梱設定にしたのであれば、とても良く考えられた同梱設定だと思います。
この価格帯の天体望遠鏡に『正立天頂プリズム』が同梱されているのは、正直驚きです!天体望遠鏡を初めて使う方にも優しい同梱設定ですし、(見る対象に注意が必要ですが)地上を見ることにも使えるので、ユーザーの事をよく考えた同梱設定だと思ます。
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」の架台(天体望遠鏡を載せる台)は、経緯台(上下左右に動かして天体を導入する台)です。天体望遠鏡の中でも、長い脚のため「かさばる」部分がこの架台になります。
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」 では、テーブル等の上で使うことを想定して、長い脚はなく、折りたためる3つの短い脚がついたスタイルの経緯台となっています。そのため、高い収納性を生み出しています。
上下左右の動きは、左右方向はロックする仕組みがない「フリーストップ式」になっています。上下方向は、ロックするノブがありますので、それを緩めると上下に動かすことができます。
操作方法は単純なので、使い方で悩むことは無いと思います。もちろん、自動導入装置などがあるわけではないので、バッテリーの心配もありません。
長い脚を持たないタイプの経緯台は、以前にも発売されたことがありました。ビクセンの「スフィンクス赤道儀」です。
“ビクセン スフィンクス赤道儀” https://www.vixen.co.jp/product/27012_5/
このタイプの最大の問題は、実際に夜空の下で星を見る時に、「どこの上に置いて使おうか?」という問題に直面する所です。今回も実際に木星、土星を観察しようとベランダに持ち出しましたが、ベランダにはそもそも背の高い物を置きっぱなしにはできませんし、テーブルが設置されているわけでもありません。
ベランダの床に置いてしまうと、天体望遠鏡を覗くことが「何かの苦行」のようになってしまいます。キャンプ用のテーブルも試してみましたが、振動を抑えることが出来ず、そもそも天体を導入することが困難でした。
(この辺りは、実際に天体観察をした時の様子を纏めたブログにて、使い勝手も含めて報告したいと思います)
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」には、はじめからスマートフォンを天体望遠鏡に取り付けるためのアダプターが同梱されています。そのため、スマホをお持ちであれば、購入したその日から天体写真撮影にチャレンジできます。
実際の使い方は、スマートフォンアダプターに先にスマートフォンをゴムバンドで固定して、アイピースの上から、かぶせるようにスマートフォンアダプターをはめ込みます。
覗いている天体をそのままスマートフォンで撮影することができます。
このスタイルのスマートフォンアダプターの利点は、天体を導入した後に、アダプターをかぶせるだけで撮影できる点です。
ただ「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」のように、全体が軽い天体望遠鏡の場合、スマートフォンアダプターをアイピースにかぶせた瞬間、天体望遠鏡の位置がズレてしまうことが多々あります。そのため、『天体を導入する→アダプターかぶせる→ズレる→入れなおす』を繰り返すことがああります。
今回「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」 を紹介させて頂きましが、実際に購入して使ってみた私がおススメするユーザーは、次のような方々だと感じました
★宇宙や天文に興味・関心を持った子どもたち
★子どもに宇宙や天文に興味関心を持ってもらいたいと感じたご家族
★子どもたちに宇宙や天文に触れる機会を提供している、物作りの楽しさを伝えている方々
最近流行の「自動導入」のような手軽さがある訳ではありませんので、「とにかく手軽に星空観察」と思われている方が、この天体望遠鏡を購入すると、天体を入れる段階で挫折してしまうかも知れません。
今日、夜空にどんな星が見えているかを調べ、自分の目で探して、そこに天体望遠鏡を向けてみる。そして天体望遠鏡を覗いてみると、そこには自分が調べて探した天体が見えていると思います。
「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」 では、そんな「宇宙を調べ探し確かめる」という体験を子どもたちに提供する事が出来ます。
宇宙や天文に興味・関心を持って下さった子どもたちには、最適な一台だと思います。
次回は、実際に星空の下で「MAKSY GO 60(マクシー・ゴー 60)」を使った時のレビューをお届けいたします!お楽しみに!!(晴れる事を祈ってください!)