【天文イベント】「星の美しさを伝えた天体望遠鏡たち」ニコンミュージアム企画展が8月28日まで開催【常設展示編】

 東京都品川区にある「ニコンミュージアム」では、2021年3月2日から8月28日まで、ニコンミュージアム企画展「星の美しさを伝えた天体望遠鏡たち」が開催されています。新型コロナウイルス感染症対策のため4月27日から臨時休業していましたが、6月8日から再開されました。

 今回は「常設展示編」と題して、常設展示されている展示品のご紹介と、私が担当した機種を深い解説付きでご紹介します。

ニコンミュージアム
歴代のカメラたち

 ニコンミュージアムには、歴代のカメラたちが一堂に展示されているコーナーがあります。

 フイルム時代のカメラから、最新のデジタル一眼レフカメラまで、販売した全てのカメラが展示されているわけではありませんが、主だった機種はほとんど展示されています。(逆に展示されてないと、担当した人間としては、チト凹みます)

 カメラが時代と共にどのように変化していったのか?いつごろデジタルの波がやってきたいのか、この展示ブースを見ていると、そんなことが見えてきます。

 また、1980~90年代はカメラの世界も色々と元気があったんだなと、感じる面もあります(結構いい感じのデザインのカメラがあったりします)

ニコンミュージアム 常設展示
フィッシュアイレンズ
Nikon COOLPIX950
あらい
あらい

 当時フィッシュアイレンズは、天頂(真上)にレンズを向けて撮影して、雲量(空にある雲の量)の測定などにも使用されたりしました。このレンズで「天の川」を撮影すると、感動します!

 COOLPIX950は、1999年に発売されたコンパクトデジタルカメラです。レンズがクルクル回る構造をしていて、ニコンでは「スイバル式」と呼んでいました。この構造により、人込みの後ろからでも、カメラを上に持ち上げて、液晶部分を自分の方に向けられるので、思い通りにフレーミングが出来る特徴がありました。これは、デジタルカメラならではの構造です。

 ズームは3倍、画素数は200万画素しかありませんでしたが、当時の価格は約12万円!今のデジタルカメラがいかに安く、高性能になったか・・・グリップデザイン、グリップ部にダイヤルと、当時の一眼レフカメラのデザインを踏襲したこともあり、とても人気の高い機種となりました。

 天体写真を撮られている方には、ズームしても全長が変わらない構造のため、アイピースに押し当てて使ってもズームできるので「コリメート撮影には最適!」といった面でも人気がありました。 

想いで深い機種たち

 COOLPIX3700は、私が初めて光学設計担当した機種です。機種としても「SDカード初採用機種」「音声付VGA30fps動画撮影初対応機種」と、機種としても意欲的な機種機種でした。今思えは、この時から私と動画との付き合いは始まっていたのですね・・・テスト撮影のために、よく踏切から小田急線を動画撮影していました。

 COOLPIX S1は、私としても、ニコンとしても、初となる「屈曲式光学系」を採用した機種です。通常、レンズは光が入ってくる所から、光が集まる場所(カメラで言うとフイルム、イメージセンサー)までは、一直線になっています。そのため「長さが長くなる=カメラの厚みは薄くできない」という問題がありました。

 その問題を解決する案としてだされたのが、レンズの途中で光を曲げる「屈曲式光学系」です。初めて市場に送り出したのは、コニカミノルタでした。初めてその光学系を見た時は「これ、良く作ってるな~作るの大変そう・・・」という感想でしたが、まさかブーメランのように、自分に返ってくるとは思ってもいませんでした。

 このカメラ、実はカタログには載せて頂けなかったのですが、世界初の仕組みが入っていました。それは、フォーカス(ピント)調整の時、普通は1つのレンズ(群)を動かして行う所、2つのレンズ(群)を動かして行っている点です。その結果、このカメラは、マクロ撮影したとき、中心から周辺まで驚くほどの解像力を持っています。(このような仕組みをフローティング・フォーカスといいます)

COOLPIX3700
COOLPIX S1
とても「尖がった」機種たち

 私の担当した機種は、何故かどれも「ちょっと?結構?奇天烈」な機種が多かった気がします。そんな中で多くの方にお褒め頂いた機種が「COOLPIX P520」です。

 この機種は当時としては、世界初の35㎜換算1,000㎜までズームすることが出来る、超高倍率ズームレンズ搭載の機種です。当然、多くの方が「月」を撮るだろうと勝手に(笑)想定して、望遠側のレンズ性能は、当時の他社の高倍率ズームレンズとは比べ物にならないくらい高くしてしまいました。それと、月を撮影するのに換算1,000㎜は捨てたくなかったので、実は当初のスペックはズーム比40倍のカメラだったのですが、しれっと望遠側を換算1,000㎜、ズーム比42倍の光学系として提案しました。

 結果としては、この「換算1,000㎜」が天文屋さんだけではなく、鳥の写真を撮られる方や、飛行機や船など、近くに近づけない被写体を撮影されている方々にとても好評となり、現在でもこの機種の弟たちが活躍しています。

 このP520より「奇天烈」な機種が「COOLPIX S1000PJ」を兄に持つ「プロジェクター内臓デジタルカメラ」です。「COOLPIX S1」で登場した「ズームしても飛び出ない」光学系を活かして、撮影したら、そのカメラで、その場で、壁にプロジェクターで投影するという「自己完結カメラ」です。

 プロジェクターの性能も高くて面白いカメラだったのですが、プロジェクター使うと、あっという間にバッテリーが無くなるのと、結構熱くなるので、パッとしないまま消えて行ってしまいました。

 今だったら、スマホの画面を投影できるようになっていれば、あるいはカメラで撮っている映像はスマホでZoomに送って、相手の画面をプロジェクターで投影するという使い方ができていたら、活躍していたかもしれません。

COOLPIX P520
COOLPIX S1000PJ
カメラ以外の「光学系」

 ニコンミュージアムでは、ニコンが扱ってきた、扱っている「カメラ以外」の光学系たちも展示してあります。中には普段お目にすることが出来ない、半導体を作る装置「ステッパー」の光学系なども展示してあります。

 また、目の検査で使う「眼底カメラ」や「顕微鏡」なども展示してありますので、品川の近くを通る際には、ほんの少し時間を作って寄り道してみてはいかがでしょうか?

施設概要

  • 施設名 ・ニコンミュージアム
  • 開館時間・10:00~17:00(最終入館は16:30まで)
  • 休館日 ・月曜日、日曜日、祝日、同館の定める日
  • 入館料 ・無料
  • 所在地 ・東京都港区港南2-15-3 品川インターシティC棟2階
  • 公式サイト:https://www.nikon.co.jp/corporate/museum/