【宇宙×開発】10分で分かる!ロケットビジネス

やぎ(さん)
やぎ(さん)

 【SpaceShowroom #03】では、「10分でわかる!ロケットビジネス」と題して「宇宙×開発」担当解説員のかわむらさんに、ロケットビジネスについて解説して頂きました。改めてロケットビジネスについて纏めてみました。

 現在の宇宙ビジネスは衛星サービス、衛星製造、ロケット産業、非衛星サービス、地上設備の5つの分野に分けられます。ロケットや衛星の製造に関する市場の割合は全体の5%であり、さらにロケット産業に限れば、その割合は宇宙ビジネスの全体のたった1%です。しかし、宇宙へものを輸送する大事なインフラのひとつであるため、ロケットビジネスは重要な位置づけとなっています。
 事業分野としては大型ロケット、小型ロケット、宇宙旅行の3つに大きく分けることができ、探査機や人工衛星を打ち上げたり、ISSや月などに人やものを輸送することでロケットビジネスは成り立っています。
 ロケットビジネスというとアメリカの企業やベンチャー企業が活躍しているというイメージが強いかもしれませんが、最近では中国企業も注目されつつあります。

「コスト削減でぐんと近づく宇宙」

 ロケットビジネスにおいて一番ネックとなってくるのが「コスト」です。そのため全てのロケットビジネスに関わる企業は、あの手この手でコスト削減に尽力しています。そこで今回は、それぞれの企業がどんなアイデアでコスト削減に挑んでいるのかを紹介していきます!

(1)ロケットブースターの再利用

 これはロケットのパーツの中でも、第一段ブースターを再利用することによってコスト削減を試みる方法ですす。スペースシャトルなどと違い、宇宙まで到達しない部品を再利用するので、高温への対策を考える必要がなくコストを抑えることができます。SpaceX(米)ではフェアリングの回収・再利用も行っているほか、RelativitiySpace(米)では第一段だけでなく第二段、他の部品についての再利用も検討されているそうです。

 回収方法は、第一段ブースター分離後に機体を回転させて逆噴射し地球に戻すという至ってシンプルな方法です。さらにほかの回収の仕組みとして、パラシュートで滑空して、それを空中でヘリコプターで捕まえて回収する方法や、第一段のエンジンに翼をつけてパラグライダーのように滑空するやりかたがあるそうです。(Airbus Defence and space(欧)による。ただし、 想定よりもコスト削減につながらなかったため、2018年に開発が打ち切られています)

(2)航空機によるロケット打ち上げ

 続いては航空機にロケットを搭載して、高いところまで航空機で運んでから打ち上げる方法です。既存の旅客機や輸送機を改造することで設備投資を抑えることができ、さらに親機を複数回利用することで一回の打ち上げ費用を削減できます。また、この方法だと天候に作用されにくく、高いところから打ち上げるのでロケット発射時の空気抵抗や空力加熱などが低減されるといったメリットもあります。ここまで聞くと良いことづくめのように思えますが、実際はそこまで上手くいっていない様子・・・その背景に、推進力に課題があり高高度までの打ち上げが難しい点などが考えられます。

 一番よく使われているのは航空機水平発射という方法で、これは航空機の翼の下や胴体の下にロケットを取り付けて航空機から発射する方法です。Stratolaunch Systems(英)の場合は、6機のターボファンエンジン(ジェット機に使われているようなエンジン)と史上最大の翼幅を持つ親機を用いて、4体のロケットを運用しています。現在運用されているのは高度400mの低軌道に、370kgのペイロードをもつ「ペガサスロケット」のみです。 
 また、Virgin Galactic(米)も同じ様な方法で今度3度目の有人飛行に成功していますが、あまりうまくいっていない印象です。

 この方法の使用用途としては、サブオービタルでの宇宙旅行や小型人工衛星の打ち上げが挙げられます。

(3)マイクロ波の活用

 これはビーミング推進と呼ばれる画期的なシステムを利用した方法です。とてもシンプルなシステムで、燃料タンクや複雑なポンプなどが必要なく、打ち上げロケット本体の構造を非常に簡単にすることが出来るためロケットの小型化が可能となります。また打ち上げシステム全体を何度も繰り返し使用できるため大幅なコスト削減が期待されています。

 ビーミング推進とはマイクロ波やレーザービームを使って飛んでいるロケットに飛行エネルギーを供給する推進方法で、地上から推進エネルギーを送るため本体に燃料を詰まなくても飛ぶことが出来ます。放送中には船舶にも利用できるのでは、等のアイデアが出ましたが……?

たい
たい

マイクロ波が海鳥などに当たったら焼き鳥になっちゃうのでは!?

(4)ハイブリッドエンジン

 最後に紹介するのはハイブリッドエンジンです。ジェットエンジンとロケットエンジンが一体化されたエンジンで、将来的には航空機のように再利用可能な打ち上げロケットのベースになり得る可能性があります。また、同じペイロード(ロケットに搭載された人工衛星などのこと)を軌道上に運ぶ用途でも、現行の発射装置の規模の半分で良く、大幅なコスト削減が見込まれています。

 ハイブリッドエンジンにはさまざまな仕様がありますが、Reaction Engines(英)では、エアブレッシング推進型ロケットエンジンという種類の、「サーブル」というエンジンを開発しています。離陸からマッハ5までは燃費の少ないジェットエンジンを利用し、水素燃料のサポートで音速の25倍まで加速します。大気圏を突破すると液体酸素を利用して高出力を出せるロケットモードに切り替えるそうです。

 PDエアロスペース(日)では、間欠爆発燃焼(閉じた空間での爆発燃焼)を利用して、大気環境に応じてジェット燃焼とロケット燃焼を独自のコンセプトで切り替えるパネルデストネーションエンジンと呼ばれるエンジンを開発中です。利用用途としては、超音速旅客機や宇宙旅行ということになるそうです。

 まだまだ開発途中だが、完成したらSFの世界のような体験ができるかもしれませんね!

 最後に今後の気になるポイントとしては、小型ロケットベンチャーの躍進を取り上げたいと思います。

 ロケットベンチャー企業のほとんどは小型ロケット開発企業で、そこで低価格帯のロケットが増えることでさらなる宇宙ビジネスの発展が期待できると予想されています。また、将来的にロケットに代わる輸送手段として宇宙エレベータの動向も気になります。

 これが実現すれば大幅にコストが下がって宇宙が近くなると思います。

やぎ(さん)の ”ここが気になる”

やぎ(さん)
やぎ(さん)

Q1.元々ロケットを飛ばしてきた企業は大型ロケット、ベンチャー企業系は小型ロケットの開発といったように、ロケットビジネスは二極化しているイメージがありますが、最終的にどっちが主力になるのですか?

かわむら
かわむら

A1.将来的には、大学や民間企業がちょっとしたビジネスや研究のために気軽に使える小型ロケット、将来的に火星を目指す場合や小型衛星のコンストレーション(一度に大量に打ち上げる)には大型ロケットと用途に応じて使い分けるようになるのではないか。小型大型の両方からどんどん成長していって、いつかタクシーに乗る感覚でロケットが使えるようになる日がくるといいですね!

やぎ(さん)
やぎ(さん)

Q2.ところでサブオービタルって何ですか?

かわむら
かわむら

A2.国交省と内閣府宇宙開発戦略推進事務局が合同で設立した「サブオービタル飛行に関する官民協議会」では、サブオービタルは「地上から出発し、高度100km程度まで上昇後、地上に帰還する飛行」と定義されている。つまりは地球をぐるぐるまわる周回軌道にはのらず、打ち上げ弾道軌道(ボールを真上に投げたときのような軌道)を描いて高度100kmあたりを飛行して地球に帰ってくるもののこと。ロケットエンジンがないと100kmまで行くことは出来ないが、ロケットというよりは航空機に近いもののため、ロケットのための法律と航空機のための法律、どっちにも引っかかってしまって今の日本で飛ばすのは難しそう。

やぎ(さん)
やぎ(さん)

Q3.ジェットエンジンとロケットエンジンの違いは何ですか

かわむら
かわむら

A3.燃料を燃やして高速の噴流を発生させ、その反作用によって推力を得るという点では同じ。(例えば膨らませた風船の口を手放すと勢いよく飛んでいくようなイメージ。)大きく違うのは、燃料を燃やすために必要な酸素(酸化剤)をどこから得ているかという点だ。ジェットエンジンの場合は、外から空気を取り込んで圧縮機で圧縮し、それに燃料を合わせることで爆発を起こし噴流を発生させている。それに対してロケットは空気の薄いところを飛行しなければなならないため、燃料を燃やすための酸素(酸化剤)は自前で持っていく必要がある。

参考文献

3分でわかるサブオービタル|Ryosuke Hoshi(3分でわかる宇宙法)|note
「専門基礎ライブラリー 熱力学」監修:金原粲 2011年 実教出版
【最新ハイテク講座】航空機からガンダムまで!「ジェットエンジン」と「ロケットエンジン」 – ライブドアニュース (livedoor.com)

SpaceShowroom #03・10分でわかる!ロケットビジネス!!