【書籍紹介】さばの缶づめ、宇宙へいく

  • 著者名:小坂 康之
  • 著者名:林 公代
  • 出版社:イースト・プレス
  • ジャンル:小説
  • レベル:初心者(高校生)~
  • 本のサイズ:ソフトカバー
    (W130mmxH170mm)
  • 総ページ数:205ページ
  • 字の大きさ:小サイズ(ふりがななし)
さばの缶づめ、宇宙へいく

あらすじ

 福井県立小浜水産高校に、期待を膨らませた1人の新人教師「小坂康之」が赴任する。
小浜水産高校は、一昔前は「水産高の名門」と言われていたからだ。だが、今は県内一の荒れた教育困難校となっていた。
 生徒が寝ずに授業を受けることが出来るには、どうしたら良いか?小坂は、試行錯誤しながら授業を行っていた。

 そんな中、同校が「実習」で作っている、伝統の「鯖缶」にさらに磨きをかけようと考えていた。そして、アポロ計画で作られた「HACCP」(衛生管理手法)を取り入れたノルウェーの企業を思い出した。
 その企業は、小さい工場ながらも、基準をクリアしていたため、小浜水産高校でも取れるのではないかと、考え始めた。そして、莫大なコストが掛かる設備も、低コストで作り上げ成し遂げていく。

ある日の授業中、一人の生徒が「宇宙食、作れるんちゃう?」と言う一言で、宇宙への道が開き始めるきっかけとなっていった。
 「宇宙食」を開発する事は、簡単には行かなかった。

 NASAやJAXAの厳しい基準にどう立ち向かい、波のように打ち寄せる厳しい困難に立ち向かって、高校生が作った「さば缶」作りが、宇宙食として採用され、宇宙で野口宇宙飛行士の手に届いたかを描く物語である。

小さな波紋が大きくなると偉大な力になる

 始めは、小坂先生の「この学校をどうにかしなければ」と言う、小さな情熱からでした。ですが、「鯖街道を宇宙へ」の合言葉に、周囲の大人たちを巻き込みながら先輩から後輩へとバトンを14年繋げて、それを達成させた事は、凄いと思いました。
 そして、小坂先生が子供たちに為に起こす行動力には、脱帽させられました。

 始めは、小さな波の波紋だったかもしれない。けれど、その波紋がどんどん大きくなり、大きくなった波紋は時に、驚くような偉業を成し遂げる力になる。その事を証明したのが、この本です。

 また、子供たちを「悪い方にも良い方にも目を向けさせるのも大人の考え方しだいなんだ。」と、気づかせれられました。

探求心をくすぐられる1冊

 私にも、高校生の息子がおります。(長男)やりたい事があり、高専に入学しました。ですが、やりたい事が出来ないという現実を知った時、前に進む事が出来ないでいました。

 そんな、彼に「こんな高校生もいるんだよ。」と軽い気持ちで、この本を渡してみました。
最初は、めんどくさそうに読み始めたのですが、読んでいくうちに、生徒の気持ちやものづくりへの情熱に刺激を受けた彼は、突然「高専で、また人工衛星を飛ばしたい」と言い出しました。

 小浜水産高校と同じ、情熱を持った先生が生徒の自主性を尊重しながら、地域の工場や大人を巻き込んで打ち上げた事があったからです。
 あいにく、その先生は大学に行ってしまい、打ち上げたことすら、今は幻となってしまっています。ですが、息子は、「チャレンジしたい!やりたい!」と先生達や友人に掛け合う所から、始めたそうです。

 このご時世、目標を見失がちです。見失いそうになっている高校生や大人にぜひ、読んで頂きたい一冊です。
きっと、心の奥に眠る探求心が、目覚めるきっかけとなるはずです。
 また、子供達の向上心や探求心を育てる参考にもなるため、子育て中の方にもおすすめしたい1冊です。